リハビリテーションという言葉は普及してきていますが「ケガをした際に理学療法士や作業療法士から運動指導を受けること」「身体の機能を改善させること」とイメージしがちではありませんか?ここでは、リハビリテーションの意味を確認し、医学的リハビリテーションについて説明します。
目次
- リハビリテーションとは
1.世界保健機関(WHO)による定義
2.障害者基本計画(平成14年2月) - 医学的リハビリテーションとは
- 医学的リハビリテーションの歴史
- その他のリハビリテーションについて
1.職業的リハビリテーション
2.社会的リハビリテーション
3.教育的リハビリテーション
4.リハビリテーション工学 - まとめ
リハビリテーションとは
リハビリテーションはラテン語で、re(再び)+habilis(適する)から成り立っています。リハビリテーションは単なる機能回復ではなく、障害に関わらず「人間らしく生きる権利の回復」や「自分らしく生きること」が重要とされており、そのために行われる技術や支援など、すべての活動や考え方のことを指します。わが国では「全人間的復権」と評されています。
リハビリテーションの定義は、いくつもあります。代表的なものをご紹介します。
【世界保健機関(WHO)による定義】
リハビリテーションは、筋力低下および社会的不利をもたらすような状態の影響を軽減し、能力低下や社会的不利がある者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含んでいる。リハビリテーションは能力低下・社会的不利のある者を環境に適応するように訓練するだけではなく、社会統合を促すために、環境や社会へ、全体として介入することを目標としている。
【障害者基本計画(平成14年2月)】
リハビリテーションは、障害者の身体的、精神的、社会的な自立能力の向上を目指す総合的なプログラムであるとともに、それにとどまらず障害者のライフステージのすべての段階において全人間的復権に寄与し、障害者の自立と参加を目指す考え方。
医学的リハビリテーションとは
リハビリテーションは、医学的リハビリテーション、職業的リハビリテーション、社会的リハビリテーション、教育的リハビリテーション、リハビリテーション工学の4領域に分かれています。
医学的リハビリテーションの定義は、個人の機能的または心理的能力を、必要な場合は代償手段を活用することによって発達させる一連の医療であって、それによって障害者が自立し、活動的な生活を送ることができるようにすることです。
医学的リハビリテーションは主に病院や診療所で行われ、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、ソーシャルワーカーなどの医療専門職がチームを組んで行なわれます。それぞれの専門職が、患者の心身機能の維持・向上・予防などに関して、同じ目標を持ち、その目標を達成するために治療などが実施されます。
また、病院だけではなく、障害がある人のリハビリテーションの過程において、保健・医療などの医学的なことにも対応します。
医学的リハビリテーションの歴史
リハビリテーションは、1910~1940年頃からその考え方が普及し、1940年頃から1970年頃にかけて、世界、日本ともに医学の中で医学的リハビリテーションが確立され始めました。
1940年頃のアメリカでは理学療法や作業療法が戦傷者の治療に用いられ、戦争で障害を負った軍人に対して、職業訓練が開始しました。
また、次第に日本でも戦争で傷を負った軍人の回復訓練や、義手や義足の制作や研究が進み義肢の使用訓練などが試され始めました。戦争の中で、医学的リハビリテーションの基礎が作られていったのです。
その他のリハビリテーションについて
・職業的リハビリテーション
職業的リハビリテーションは、障害を持つ人が働きがいのある人間らしい仕事に就き、それを維持できるように支援することです。サービスの内容は、職業評価(職業能力を評価する)、職業指導、職業訓練、職業あっせん、保護雇用などがあります。
・社会的リハビリテーション
社会的リハビリテーションは、社会生活力を高めることを目的とする支援であり、社会の中で生きる上で障害がある人の権利を確保し、経済的・社会的な問題があるのであれば、社会の仕組み自体にアプローチすることです。その内容は、身体障害者自立支援施設などの生活施設の整備、障害者に適した街づくり、障害者の自立や生活を支援する制度の確立などがあります。
・教育的リハビリテーション
教育的リハビリテーションは、障害のある児童や人の能力の向上を図り、社会で生活するために必要なことを伝えるなど、障害者への総合的な教育のことを指します。障害児教育や特別支援教育とほとんど同じような意味です。
・リハビリテーション工学
リハビリテーション工学は、リハビリテーションに対する工学的なアプローチのことです。義肢装具やコミュニケーション機器、住宅改造、交通機関のバリアフリーなどがリハビリテーション工学の対象となります。
まとめ
医学的リハビリテーションとは、リハビリテーションという全人間復権に関わるサポートの中の領域のひとつでした。医学的リハビリテーションの中で、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が、他職種と協働し活躍しています。
障害がある人のリハビリテーションの過程において、保健・医療などの医学的なことにも対応する重要な領域です。