作業療法士と理学療法士は、リハビリテーションのプロフェッショナルです。それぞれ国家資格で、国から一定の知識と技術があると認められており、社会的な信頼も高い職業です。病院やリハビリテーションセンターなどで勤務していますが、作業療法士と理学療法士の違いはご存じですか? 今回は、作業療法士と理学療法士の違いについて紹介していきます。
目次
- 作業療法士と理学療法士の仕事内容の違い
1.作業療法士の仕事
2.理学療法士の仕事
3.作業療法士と理学療法士の仕事内容の違い - 作業療法士と理学療法士の働く場所の違い
- 作業療法士と理学療法士では国家試験の難易度に差はあるの?
- まとめ
作業療法士と理学療法士の仕事内容の違い
<作業療法士の仕事>
理学療法士法及び作業療法士法では、以下のように作業療法士が定義されています。
“「作業療法」とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせることをいう”
引用:厚生労働省 理学療法士法及び作業療法士法(昭和四十年六月二十九日)
作業療法の対象は、身体の障害や心の病、生まれつきの障害がある方に対して行われます。作業療法は、生活していくために必要な動作や社会に適応するための能力、家事や余暇活動などの様々な「作業」が行えるように支援を行い、また「作業」を通じて社会とのつながりを作る支援を行います。
法律には「手芸、工作その他の作業を行わせること」とありますが、実際には手工芸だけではなく、その人の生活に必要な動作の練習や、その人にあった趣味や余暇活動などが行えるように支援します。 生きがいを支援するスペシャリストであると言えるでしょう。
<理学療法士の仕事>
理学療法士及び作業療法士法では、以下のように理学療法士が定義されています。
“「理学療法」とは、身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう”
引用:厚生労働省 理学療法士法及び作業療法士法(昭和四十年六月二十九日)
理学療法士は、病気やけが、スポーツなどの様々な理由で、基本動作や日常生活の動作が行いにくくなった人や、身体機能が低下した方を対象に治療を行います。基本動作とは、寝返り、起き上がり、座位、立ち上がりなどからなる起居動作と、車椅子や便器への移乗動作、歩行や車椅子駆動などの移動動作のことを指します。
筋や骨格、心肺機能などの体の状態を評価し、運動機能の維持・改善を目的に、その方に合った体操やマッサージ、電気や温熱、光線などの物理的手段を用いて治療を行います。
<作業療法士と理学療法士の仕事内容の違い>
作業療法士は、統合失調症や気分(感情)障害、神経症性障害など精神領域のリハビリテーションが行えることが大きな特徴です。心の病からの回復とともに、日常生活の過ごし方を一緒に考え、再発しないように支援を行います。また、理学療法士は筋骨格や心肺機能などの心身機能の回復、基本動作の獲得を得意としています。 作業療法士は、日常生活動作や趣味活動などの作業を再獲得する支援を得意としています。理学療法士が基本的な体の機能を回復させることで土台を作り、作業療法士がそれをより発展させ、食事やトイレ動作などの日常に必要な動作や、余暇活動に繋げていくのです。
作業療法士と理学療法士の働く場所の違い
作業療法士・理学療法士ともに、病院やリハビリテーションセンター、介護保健施設や訪問・通所リハビリテーションなどで勤務しています。また、作業療法士・理学療法士ともに障害がある子供たちに関わることもできるので、発達障害の診療を行っている病院・診療所や小児科、児童福祉施設や特別支援学校で勤務することもできます。 一方で、作業療法士は精神領域のリハビリテーションが行えることを生かし、精神科やメンタルクリニックで働くことができます。
作業療法士と理学療法士では国家試験の難易度に差はあるの?
国家試験の過去5年の平均合格率は、作業療法士が79.5%、理学療法士が82.8%です。一方で、新卒者の合格率は作業療法士、理学療法士ともに90%を超えています。 養成校でしっかり勉強をすることで、作業療法士・理学療法士ともに合格を目指すことができる資格です。
まとめ
作業療法士・理学療法士ともに、リハビリテーションのプロフェッショナルです。作業療法士はその人らしい作業や生きがいを取り戻すために、理学療法士は身体機能や基本動作の改善を目指し治療を行います。治療する内容に違いはありますが、作業療法士も理学療法士も、対象となる方が、その人らしく生活するお手伝いを行います。
自分自身の治療によって、笑顔を取り戻す瞬間を近くで見ることできることは、作業療法士と理学療法士の仕事の魅力であり、やりがいです。 ぜひ、そんな魅力ある作業療法士や理学療法士を目指してみてはいかがでしょうか。